SEKIROには苦難や周回など、様々な条件で敵を強化するシステムが存在します。
今回はその中でもあまり知られていない「進行ドーピング*1」について。
進行ドーピングとは
一言で言うと、ゲームの進行状況によって敵を強化するシステムです。
「なんで敵が強くなるんだよ」と思われるかもしれませんが、この仕組みなしにSEKIROは神ゲーたり得なかったと言えるほど重要な補正です。理由についてはのちほど。
進行ドーピング、非常によくできたシステムなのですが、仕組みは至ってシンプル。
敵に与えられた「エリアタグ」に対して5つの補正段階(朝・昼・夕・夜・鐘宵)があり、その段階毎に設定された倍率を敵の各ステータス値にかけるだけです。
例えば、HP基礎値200・体幹基礎値100の敵がいたとします。与えられたエリアタグは「平田屋敷・後半」。ゲーム内の時間帯から補正倍率を求め、ステータスを割り出すと…
時間帯 | 倍率(身体力) | HP(基礎値200) | 体幹(基礎値100) |
---|---|---|---|
朝 | 1.25 | 250 | 125 |
昼 | 1.75 | 350 | 175 |
夕 | 2.00 | 400 | 200 |
夜 | 2.50 | 500 | 250 |
鐘宵 | 3.00 | 600 | 300 |
こんな感じ。
表にある通り、この倍率は身体力に対してで、攻め力にはまた別の倍率が設定されています。
時間帯と「鐘鬼」の関係
前項で「鐘宵」という言葉にひっかかった方がいるかもしれません。
鐘宵はその名の通り、鐘鬼を持った状態での夜、つまり「夜よりも上」の補正段階のことです。夜に鐘鬼を持っていると「鐘宵」の補正が敵にかかります。
では夜以外は?
これも単純で、補正段階がひとつ先の時間帯になります。
朝に鐘鬼を持っていれば、補正は「昼」に。
夕に鐘鬼を持っていれば、補正は「夜」に。
簡単ですね。
時間帯が進む条件
次は時間帯の進め方についてです。
これも比較的シンプルで、ストーリー進行もしくはボス撃破がフラグになっています。
具体的には…
- 朝:荒れ寺での目覚め
- 昼:以下2体のうち1体撃破
- 葦名弦一郎
- 破戒僧
- 夕:以下3体のうち2体撃破
- 屏風の猿たち
- 獅子猿
- 破戒僧
- 夜:輿入れする
ここまでで、補正倍率を決める仕組みは理解できたと思います。
配置とエリアタグが異なる敵
一部ですが、配置エリアとは別のエリアタグが与えられた敵が存在します。
例えば道順の実験体イベントで出現する、陣左衛門や道順、小太郎ら赤目NPC。彼らの配置エリアはいずれも捨て牢ですが、エリアタグは「落ち谷」もしくは「水生村」となっています。もちろん「捨て牢」というエリアタグが存在しないわけではありません。敢えてそう設定されているのが彼らです。
強くするだけならHPや体幹の基礎値を上げればいいのですが、そうすると終盤まで硬い、ただの面倒な敵になりかねません。剣聖一心を倒したあと、やり残し消化で赤目に苦戦させられるのはちょっと無粋ですよね。それを避けるために配置とは別の、序盤~中盤が比較的高倍率になっているエリアタグが与えられています。
高めの倍率で周囲から際立たせる“点”の調整と、ストーリー進行(時間帯の変化)による倍率上昇は抑え、最終的には倒しやすい硬さにする“線”の調整。これを一手に引き受けられるのが、進行ドーピングの強みです。
まあ、3人とも隠密忍殺できちゃうんですけど…。
データベース(エリアタグ/補正倍率/etc.)
次は実際の倍率データやタグ設定についてです。
データ量が多いので、スプレッドシートでどうぞ。
データ種毎にシートを分けているので、下にあるタブで切り替えて見てください。
ざっと説明すると…
- ボス基礎値・・・敵のステータス基礎値、エリアタグなど
- 敵強化補正・・・敵にかかる各種補正倍率
- 敵ステ自動計算・・・条件指定で敵ステータスを算出
ちなみに、エリアタグ名には内部データをそのまま使っています。はじめは実際のエリア名で呼んでいたのですが、配置エリアとの混同を避けるためこうしました。名称対応表は補正シート末尾で確認してください。
進行ドーピングの重要性
最後に、なぜ進行ドーピングがSEKIROに欠かせないのか。
それはボス撃破順の自由度に由来します。
例えば、まぼろしお蝶は序盤からクリア後までいつでも戦えるボスです。そのお蝶のHPや体幹がもし、本編クリア後、序盤の1/3相当になってしまうとしたら?
おかしな話に聞こえますが、これは補正の仕組みがなかったとき実際に起こることです。
具体的に説明します。
1周目の「序盤からクリア後までいつでも」は、言い換えると「攻め力1~12まで*2いつでも」ということです。舞い面の話はNG。
攻め力1と12の差は、与ダメージにして3.75倍*3。つまり進行ドーピングがなかった場合、戦うタイミング次第*4でお蝶のHPゲージが最大3.75倍の早さで削れていきます。見方を変えると、お蝶の硬さが1/3相当に…というわけです。
体幹ダメージについても同様ですが、体幹の仕様上、実戦での影響はさらに大きくなります。なぜなら体幹システムは、単純なダメージ量ではなく「自然回復分を差し引いた上で、どれだけ同じ時間内に蓄積できるか」を強さの物差しとしているからです。
例えば、攻め力1で与える体幹ダメージを1分あたり1000とします。
そして、その1分間で自然回復される体幹量を仮に300とします。
差し引きで700ダメージ。
では攻め力12で、全く同じ戦いをした場合どうでしょう。
与ダメージ3750、回復量300。
差し引きで3450ダメージ。
3450÷700で、約4.9倍です。3.75倍から3割以上の上振れ。常在スキルや夜叉戮など、条件次第では8倍も射程圏内。こうなるともう、お蝶はジャンプ不死斬りで瞬殺できそうです。もはやボスというよりモブ。
せっかくなので、デバッグMODで斬ってみました。
よっわ
しかし実際のお蝶は、類稀なる強者として多くのプレイヤーの心に残っています。これは進行ドーピングがあるからこそです。
つまり進行ドーピングとは、どんな順番でボスを倒しても歯応えを保ってくれるシステム、いわば「忍殺のカタルシス」を裏で支える仕組みなのです。お蝶の例は極端ですが、この補正はどのボスにもいい塩梅で調整を施してくれます。
敵が強くなって嬉しい。神ゲーですね。
補正データの活用
長々説明しておいてなんですが、この進行ドーピング、全体像を把握しても活かせる場面はほとんどありません。先にも書いた通り、SEKIROは時間による体幹回復の影響が大きく、与ダメージが一定量になれば勝ちというわけではないからです。敵のデータをあれこれとって計算するより、実戦での確認が精度も効率も圧倒的。
ですが、例外もあります。
それが攻め力1でなるべく楽する撃破チャートを考えるときです。
そのチャートについてはまた次回。